型にとらわれない思考力と創造力
社運を賭けた大規模なプロジェクトには、それを完遂できるだけのチームが欠かせない。精鋭部隊に集められたのは、プロジェクトの推進役を担う茂木。プロジェクトリーダーとして要件定義や設計の統括、人員の管理を担当する加藤。インフラや基盤を含めた、アーキテクチャの組み立てを担当する西澤。本プロジェクトのなかでも機密性や専門性の高い分野に携わり、お客様との窓口役を務める坂本。この4名を主要メンバーとして、プロジェクトが本格的に走り出した。
システムをつくる作業以前に難航したのが、お客様との打ち合わせだ。システムそのものやITとの接点が少ないお客様と、お客様の業務に関する知識が浅いメンバー。両者間のギャップはなかなか埋まらず、具体的なソリューションに繋げるための情報を懸命にヒアリングするも、会話がうまく成り立たないことも度々あった。たっぷりと時間をかけて、内容を一つひとつ詰めながら進めたいところではあったが、納期の制約でそうもいかない。システムの一部は、契約から半年後に控えた法改正と連動して、新システムでの稼働を余儀なくされていた。つまり、プロジェクト始動から半年後には、新しいシステムを部分的に稼働させなければならなかったのである。
「本来の流れなら、お客様との打ち合わせで要件を決め、それをもとに当社が練ったプランを提示して、お客様の同意を得てから設計に入ります。しかし当時は、最初のシステムを稼働させるまでの時間が極端に短かったので、打ち合わせが済んだ箇所から順次設計を始めました。設計している間に次の箇所の打ち合わせをしながら、できあがった部分の修正も並行するという、イレギュラーな流れで対応していました」と加藤は振り返る。
坂本も「わからないことばかりの状況ながらもプロジェクトが前進していたのは、お客様側の努力と協力姿勢が大きかったと思います。それに応えられるよう、金額や時間の制約があるなかで、できるだけいいものをつくるための工夫を常に考えながら取り組んでいました」と当時を回顧する。臨機応変な対応とお客様の協力を得て、契約から約半年という異例のスピードで一部のシステムを見事に稼働させることができた。