展示会で日の目を見る
自動運転に関する研究は、ふたつの軸から構成される。ひとつは、HILS(Hardware In the Loop Simulator)に関する研究。もう一方は、AIに関する研究だ。どちらもレベル4(無人かつハンドル装置がない自動車で、限定的な環境の道路を走行できる状態)あるいはレベル5(レベル4の条件に加え、あらゆる道路を走行できる状態)以上に向けた自動運転システムについて、シミュレーション技術を用いた検証を行うことが目的である。
前者の研究は、自動運転のバス(物理的な車両)をコントロールするAutomated Driving Systemという装置に、HILSと呼ばれる装置を繋げてコントローラーを騙すことで、仮想環境上にあるバスを実際の道路上にあるように動かすというもの。それにより、公道でリスクのある実証実験をせずとも、組んだソフトが正しく作動しているか検証できる。後者の研究概要は、AIバス・AIバス停に関するものだ。人間が手動で運転するバスの場合、バス停で待っている人を運転手が認識し停車するが、自動運転のバスにもバス停で待っている人の存在を認識させ、停車させる必要がある。それを可能にするため、バス停にAIを組み込み、待つ人の情報をバスへ返すことで停車させる仕組みを研究した。
一連の研究は、先進技術の展示会 『自動運転EXPO』と『あいちITSワールド』に出展。一般のお客様の目に触れる機会を得た。「自作で組んだアルミフレームにセンサーやカメラを取り付け、持ち込んだコンピュータでバーチャルなバスを動かすことで、AIバス停が体験できるブースを作りました。お客様の反応がよく、研究の手応えを感じました」と坂巻は現場の様子を振り返る。伊藤も「自動車メーカーの関連組織から『論文を出してみませんか?』とお声がけいただいたり、お客様から案件のお話をもらったり。私たちの取り組みが世に知れ渡ったという意味では、展示会がこのプロジェクトのターニングポイントになりました。自分自身のモチベーションが上がったできごとでもあります」と続けた。二度の展示会出展と、前橋市でのAIバスの実証実験を経て、自動運転に関するプロジェクトは終了。群馬大学との共同研究は、次なる産学連携プロジェクトへと引き継がれることとなった。